〜HAGUKUMU Radioからの切り抜き〜
HAGUKUMU Radioは、はぐくむが「これからの時代を楽しく生きる上で、大切にしたいこと」をお話ししています。ラジオでお話しした内容を、記事にてご紹介していきます。
人生100年時代に、ライフデザインをしていくための大切な観点とは
今回は、アンドリュー・スコットとリンダ・グラットンが執筆した『LIFE SHIFT 2』という本の紹介をしたいと思います。
『LIFE SHIFT 1』は2016年に発刊され、人生100年時代における人生戦略を問いかける内容が大きな話題となりました。”みんなが同じような教育を受けて、仕事をして、定年まで勤め上げて、引退後に余生を楽しむ”そのような一直線な人生を歩むことが一般的だった時代は変わりつつある。各々がどう生きたいのかを考え、多様な選択肢の中から自らの人生を選択していく時代になりつつある、という大事なメッセージを届けてくれたのが『LIFE SHIT 1』でした。
今回ご紹介するのは、その本の続きとなる『LIFE SHIFT 2』。こちらの本は、人生100年時代の「行動戦略」ということで、個人がどのようなことを心がけて行動していけばいいのかに焦点が当たっているため、具体的なヒントがたくさん得られる内容です。
時代が変わり始めているということを、ここ数年で実感し始めている人は少なくないと思います。「じゃあ、どうしたらいいんだっけ?」と、これからの自分の生き方や働き方について考える機会も増えたのではないでしょうか。これからの人生の歩み方を考える際に、具体的に何を考えていけばいいかを示唆してくれているのがこの本です。
目次を読み上げていくだけでも、我々はぐくむが日頃から大切にしている考え方やメッセージと重なる部分がたくさんあり、どうしても『LIFE SHIFT 2』をご紹介したくなりました。
初回となる今回は、「人生のあり方を設計しなおす」というパートをご紹介したいと思います。このパートでは、物語、探索、関係という3つのキーワードが登場します。
物語 ー 自分の人生の物語を生きていく
まず初めに登場するキーワードは「物語」です。これからは「自分の人生の物語を生きていく」ことが大事になる時代だと書かれています。我々はぐくむもずっと「自分の人生の物語」という表現を使い続けてきているので、こんなに著名な方がこの表現を使ってくれるなんて!と嬉しく感じました。自分という人間が、今までどんな物語を生きてきて、これからどう生きていきたいのかをしっかり考えましょうと問いかけてくれています。
具体的には、自分の年齢や、人生の時間軸というものを捉え直していくことが大切だと書かれています。そして、仕事についても自分の人生の理想像を描いた上で、しっかり描き直しましょう、と。最後には、そこに向かっていくために、時間配分を再検討しましょうと締めくくられています。これらの言葉を目にするだけでも、何か感じていただけるのではないかと思っています。
探索 ー 学習と変身の実践
次に「探索」についてですが、学習と変身を実践していくことの大切さについて触れられています。自分がどんな物語を生きていきたいのかと考え、自分の人生をSHIFTさせていこうと考えると、自分自身が変身し、知識をアップデートしていく必要がある。食わず嫌いをせずに、身軽に、気軽にさまざまなことにチャレンジしていくことが大切だと書かれています。みんながやっているからとか、周りを見てどうこうということではなく、「自分自身がこういう人生を歩んでみたい」という願望があるのなら、それに向かって素直に実践をしていきましょう、ということです。はぐくむでも実験という言葉をよく使いますが、気軽な実験を試しながら自分自身を変身させていくことが大切だと思っています。
最近では、リスキリングやリカレントなどという言葉も使われるようになってきましたが、これからの時代は生涯にわたって学び続けることが大事になると書かれています。リニア(一直線)な人生を生きるのであれば、学び直しは必要とされなかったかもしれませんが、これからの時代は人生がマルチステージ化していく。だからこそ、そのステージにあった学びが必要になっていくわけです。
一般的には、大学を出た後に学習をし続ける大人は急激に減ります。これからの時代、大人がどう学んでいくのかというのは一つの大事なテーマになりますね。
自分が生きたい人生の物語を作っていく上で、自分にとって刺激的な学びに溢れるラーニングコミュニティを持つことが重要になっていくと書かれています。会社がそういうコミュニティであれば最高ですが、そうじゃない場合はパラレルワークをしたり、仕事外のコミュニティを持つことで、そういうコミュニティを見つけていくこと。自分に合ったラーニングコミュニティを複数見つけていくことが、well beingにつながると書かれています。
関係 ー 家族の関係をリデザインする
そして、最後に「関係」については、深い絆を育み、心理的な繋がりの中で生きていくことが、豊かさ(well being)につながると書かれています。どういう人たちと、どういう関係性を育んでいきたいのか、というのが大事な観点であるということです。
このパートではまず家族の関係について触れられています。具体的には「結婚の時期が遅くなる」、「子供の数が減り、高齢の家族や親族が増える」、「家族の就労パターンが変わる」など、既に起きている変化について触れられています。このような家族の前提となる事柄が変化してきているので、家族という関係性を問い直し、リデザインすることが大切になっていくと書かれています。
家族の古いパラダイムを前提とすると関係がうまくいきにくくなりますから、すでにシフトが起きていることに呼応する形で、関係性も問い直していく必要がありますね。関係性を問い直していく際に、やはり重要になるのが、お互いの物語をどれだけ深く共有できるか、ということ。お互いがどういう物語を生きているのかを知り合うことが、支え合いの関係を育んでいく上で、とても重要になります。
この話も、常々はぐくむで触れてきている内容なので、この本の中で触れられていて、嬉しく思いました。
正解を定義するのではなく、問いかけをする
ここまでの話だけでも、常々はぐくむとして大事にして、実践を重ねてきたこととリンクする部分が大いにあります。
『LIFE SHIFT 2』も自己啓発本の一種とも言えると思いますが、「こうすべき」「これが正解だ」という論調ではないという点に、とても共感しています。
「こうすべき」という論調は、正解を決めていくことになり、同じものを金太郎飴的に大量に再生産していくことになります。
しかし、この本では、みんなが一つの正解に向かってリニアに生きていく時代は終わり、みんなが違うそれぞれの人生をセルフプロデュースしていく時代に入っていると提案してくれています。
さまざまな事例も紹介しながら、「なんでもありだとしたら、あなたはどうしていきたいですか?」と問いかけてくれている感じがします。内省のプロセスの進め方が、極めてコーチング的なアプローチだとも感じています。
これからの時代を楽しく生きていくために、ご自身の人生戦略をどうデザインをしていくのか、ぜひ一緒に考えてみませんか?
〜編集後記〜
次回は、『LIFE SHIFT 2』のより詳細な内容に触れながら、大切だと感じた部分についての議論を深めていきたいと思います。
話者:小寺 毅
筆者:荒井 智子