「はぐくむ四季の森」では、実際に森の中を歩いたり、アクティビティを通して「自分と対話するきっかけ」を提供しています。
今回は、はぐくむの小寺さん・平山さんに、サービスの内容や「はぐくむ四季の森」に込めた想い、森に入ることの意味についてお聞きしました。
意欲的に仕事に取り組む人こそ、「立ち止まる時間」を自分に与えてほしい
ーー「はぐくむ四季の森」はどのような人を対象にしていますか?
平山 いろんな方に来てもらいたいんですけど、あえて絞るなら「一旦立ち止まりたい人」でしょうか。普段は意欲的に仕事に取り組んでいて前向きなんだけど、本当はもう少し働く意味や、これから先の人生について考えたい人には特に来ていただきたいですね。
とくに優秀な人や前向きに仕事に取り組んでいる人ほど、なかなか立ち止まって人生について考えたり、自分の感じていることに目を向ける時間が取りにくいのではないかと思っていて。そういった人たちが森に入り、自然のなかで自分と向き合う時間をつくりたいと思っています。
小寺 「はぐくむ四季の森」は、ビジネスパーソンを中心に想定している面はありますね。そのなかでも、最短最速思考で仕事に取り組んでいる人たちが森に入ることで、最短最速・解決志向の世界から少し離れて、はぐくむコーチングでいう「傾聴(*1)の世界観」を体感してもらいたいなと思っています。
(*1)結論を急がずに、判断を保留して、ゆっくりと待つ姿勢。そういう意識で待つことによって感覚が開かれていく、とはぐくむのコーチングでは考えています。
そうすることで、普段の最短最速・解決型のアプローチに、もう少し柔らかさが加わってくるといいなという想いを込めています。
ーー普段のスピードを、森に入ることで少し緩める感じでしょうか。
平山 仕事を前に進めるために力を注いでいる人ほど、自分の中のわずかな違和感や、ネガティブな気持ちに気づきにくかったり、気づいていても一旦置いておくことがあると思います。
そういった、普段はあまり目を向けない部分に対して、ちゃんと時間をとって向き合うことで、等身大の自分として無理のない形で仕事に取り組めるようになるイメージですね。
小寺 そうですね。自分の心の動きにきちんと目を向けて、見ていなかった部分も含めた「全部の自分」で生きようとすると、より自分自身の全体を活かせるようになると思います。
「ときにはまわり道を」。最短最速の道は、最適で快適な近道とは限らない
ーー「はぐくむ四季の森」では、どんなことをするのでしょうか?
小寺 森に入ること自体を1つのコンテンツにしています。一緒に森を歩いたり、森のなかで対話したり、焚き火をしたり。はぐくむではいろんなサービスを展開していますが、「はぐくむ四季の森」は最もシンプルかもしれませんね。
シンプルな分、ただ森に入るだけではなく、「どのように森とともに過ごすか」をガイドするのが僕たちの役割です。
平山 森に入っていく上でガイドがあったり、森の中を歩きながら小寺さんの話を聞いたり。「森や自然からどのように学びを得るか?」を知った上で森に入るので、そこにいる時間がより豊かなものになりますよね。
とはいえ、毎回きちんと内容を定めているわけではなく、参加者のみなさんの様子を感じとりつつ、その時々で場をつくっています。僕たちが生きている現代の工業社会は、計画通りに物事を進め、そのために組織を管理統制することが是とされていますが、豊かな自然の中にはそれがありません。誰かにコントロールされた世界から離れることで、見えてくる自分や、湧き上がる気持ちがあると思っています。
ーーサービス名にも何か意味があるのでしょうか?
平山 「四季」とあるように、毎シーズン参加してもらいたいなという想いがあります。同じ場所でも季節が変われば全く雰囲気が変わって、自然を通して物事の「うつろい」を感じられるのも魅力の1つです。
それと、同じ場所に行くことで、そのときに話した内容が場所の記憶とともにフラッシュバックすることもあって。そうやって自分自身を定点観測することで、自分の変化や成長に気づきを持てる機会にもなります。
小寺 資本主義や工業社会のなかでは、わかったつもりになるというか、「いつも同じ」と錯覚してしまうのが問題点かなと思っています。たとえば同じお店の同じ料理でも、いつも同じだと思って食べているけど、本当はもっと微細で繊細な変化があるはずなんですよね。
それは人に対しても同様で、同じ場所へ行っても以前とは違うものが目に入ったり、感じ方が変わったりします。季節とともに森が変化しているように、自分自身も変化しているんですよね。森に入ることで、自然や自分が常に変わり続けていることを感じられると思いますし、それが「生きている実感」につながっていくのかなと思います。
平山 「変わらない」ということは世の中にはなくて、とくに自然物はそれが顕著です。春夏秋冬の森に入り、自分自身も日々変化しているのだと知ることで、他者への寛容さにつながったり、自分自身の生きやすさにもつながっていくのだと思っています。
ーーどんな人に「はぐくむ四季の森」に参加してもらいたいですか?
小寺 自然を体感したい人や、「ちょっとゆっくりしたいな」という人も大歓迎ですし、やはり、最短最速の世界で生きているビジネスパーソンにはぜひ来ていただきたいですね。
森に入ると、無駄に思えることが無駄じゃないと気付けたり、色々なつながりの中で、生命は生かされあっているんだということに気付けたり。
普段の最短最速思考モードでは見失ってしまいがちなことにたくさん気づけるチャンスがあると思うんですよね。森での時間を通じて、自分も存在していていいんだと深く思えたり、いろんな生命が存在していていいんだなぁと思えたら、日常の生活の中でも、いつもより優しく、たくましく生きられると思うんです。
ビジネスの現場でスピード感を持って生きている人たちが、森に入って自然を感じ、対話することで、ひらかれた感覚で物事を捉え、のびやかに大きく生きる一助になれたら嬉しいですね。そしたら、きっとビジネスの世界も、今よりも多くの生命が輝き合い、優しく、たくましくあれると思うんです。